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源泉所得税の納期の特例を適用すべきではないケース

今回は、源泉所得税の納期の特例をしないほうが良い場合があるというお話です。
早速ですが、源泉所得税の仕組みを簡単にご紹介します。

「源泉所得税」とは、給与所得から実際に支払われた月に徴収される所得税です。
当然ながら所得に対する税、所得税はサラリーマンだけが支払うものではありません。

税理士などの士業に報酬を支払ったり、芸能人に報酬を支払う場合も当然所得税が掛かります。
その場合は支払者は支払金額に応じて所得税および復興特別所得税を、
その支払う報酬から差し引くことが義務付けられています。

会社が従業員の給与から徴収する源泉所得税についても当然毎月の給与から徴収します。
これら徴収された所得税は、本人に代わって会社が支払います。

ここでいう、会社は「源泉所得義務者」と言われます。

 

支払者が源泉所得をする必要が無いケース

 

基本的に「報酬を支払う場合は源泉徴収する義務が発生」します。

しかし、源泉徴収をする義務が発生しない場合もあります。
それは、自営業等で家族やお手伝いさん(家事使用人)だけに給与を支払っている個人の場合です。

従業員を雇っている場合は基本的には源泉徴収をする必要があります。
アルバイトでも源泉徴収が必要なのはこのためです。

 

源泉徴収の納期の特例を受けることもできるけど

 

基本的には報酬を支払う場合は源泉徴収が必要です。
毎月支払うのであれば当然徴収した分をいつか払う必要があります。

所得税の場合源泉徴収した金額は、「翌月10日」までに支払う義務があります。
しかし、一部の会社は必ずしも毎月支払う必要がないという制度があります。

それが、納期の特例です。これを申請すると、
小規模事業者(従業員10名未満)の場合は納期の特例を受けることができます。

実際に国税庁のWebページには以下の通り説明があります。

 

源泉所得税は、原則として徴収した日の翌月10日が納期限となっていますが、この申請は、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者が、給与や退職手当、税理士等の報酬・料金について源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税について、次のように年2回にまとめて納付できるという特例制度を受けるために行う手続です。
1月から6月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税・・・7月10日
7月から12月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税・・・翌年1月20日
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_14.htm

 

ただし、この特例も「毎月源泉徴収しなくてよい」というものではありません。
源泉徴収義務者が毎月徴収した所得税を年2回に分けて納付することができるというだけです。

支払うべきものを先延ばしにできるということで、
ほとんどの税理士さんや書籍には、この納期の特例を申請するという前提の説明がされています。
しかし、現実にはこの特例、お得なようですがあまり意味があるものではありません。

 

組織が大きくなる予定の場合は特例を受けないほうがいい

 

実は弊社でも設立当初は数人だけだったためこの特例を受けていました。

この源泉所得税の納期の特例は、管轄の税務署に
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで認められます。

しかし、半年で10名を超えてしまいすぐに通常の納付が必要になってしまいました。

また、所得税が年2回の納付となると毎月の納付の手間は省けると思いますが、
実は毎月の納付の手間はそこまで大したことがありません。

給与計算をソフトで行っている場合は所得税についても自動計算されます。
あとは毎月1回給与支払をするように、徴収した所得税を納付するだけだからです。

そこで、ベンチャー企業や中小企業で3年以内に人数が、
10名は超えるだろうと予想している場合は、
正直この納付の特例は受けなくても良いと思います。

一度申請をすると、今度は通常の毎月納付に切り替える際にまた手続きが必要ですし、
毎月10万円にも満たないであろう徴収した所得税を半年間貯めておくと、
何を支払うべきお金なのか、純資産としてもっているお金なのか把握が難しくなります。

毎月の手間という意味では給与計算や振り込みで十分手間がかかっており、
所得税の計算はその一部でしかないために、やはり事務的なメリットも少ないのです。

成長している会社では納付を半年間遅らせることによる金額的にもインパクトも少ないことから、
ある程度、組織を大きくする予定がある場合は最初から特例を使わないという選択もありでしょう。

一方で零細企業の場合はこうした特例を使うメリットも少なからずあります。
数十万円とは言え手元に半年間置いておけるからです。

よって、この源泉所得税の納期の特例を利用する際は自分の会社がどういう成長をするのか、
どの程度の規模になることを想定しているのかを考えて選択する必要があります。

このあたりは税理士さんに依頼していると勝手に手続きしてくれるものではありますが、
社内でコーポレート業務を完結させている弊社から見ると、
あえて、利用する必要はなかった制度だったなと思う制度の一つです。