みなさんこんにちは。今日はリースについて解説いたします。
リースというと何をイメージしますか?コピー機や自動車、飛行機が有名ですね。
実はなんとエレベーターにまで使われています。
リースはどうしてお得だと言われるのか?
リースというと何やら難しそうですが実はとてもシンプルな金融商品です。
やっていることはモノを使う権利を渡す代わりに分割払いに応じる貸金業と言えます。
普通は何かを使いたいときに、全額自分で購入します。
しかし、まとまった資金が必要だったりするために財務的な負担となりますよね。
ちょっと一括では払えないとき一般的には分割払いにすると思いますが、
そのときにお店と私達の間に挟んでいる会社がありますよね。そう、カード会社やローン会社です。
リース会社も同様、主に法人に対して一定期間(リース期間)の間、リース料を対価として、
借り手にそのリース対象物を使う権利を与えるという仕組みを提供します。
その意味ではレンタルも限りなく近いところがありますが、
レンタルは借りた期間分を支払えば良かったり、短期間だったりする商売です。
中小企業の場合、リース契約によっては消耗品費として会計処理できるケースもあります。
結局の所、リースは中小企業にとっては資金繰りの負担を軽減するには使える手段です。
しかし、ペーパーレスや在宅勤務など、コピー機や社用車を使わないで済む方法を考えたほうがお得です。
結局は経費として費用を計上しているのですから、
どうしても必要ではない限りリースだろうが購入しようがお金を使うことには変わりません。
ファイナンスリース?オペレーティングリース?
実は中小企業ではなければリースだからお得とは必ずしも限りません。
近年では税務上のメリットよりも、保守や運用サービスをおまかせする一つの方法として活用されています。
リースにはファイナンス・リースとオペレーティング・リースがあります。
ファイナンス・リースは以下の3つの要件を満たす取引です。
- リース期間の中途において当該契約を解除することができないか、またはそれに準ずるリース取引
- 借り手が当該契約に基づき使用するリース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができる。
- 借り手が当該リース物件の使用に伴い生じるコストを実質的に負担する。
つまり、解約ができないリース契約はファイナンス・リースの重要な要件です。
契約上は解約可能でも、解約違約金を支払わなければならないなど、
実質的に解約不能と認められるリース取引を指しています。
ファイナンス・リースは実質的にそのリース物件の使用に伴うコストを実質的に負担しているわけですから、
結局は通常の売買取引と同様の会計処理を行わなければなりません。
よって、自社の資産と同様、減価償却を行います。
すると、会計処理上はリース物件の取得価格というのが重要になります。
リース資産はその物品の価格ではなく、利息等諸々の諸経費を合わせて、
かつ分割でリース会社に支払って利用しているので、正確なその物品の取得価格を把握するのが難しいからです。
会計基準では「リース料総額から利息相当額の合理的見積もり額を控除する」方法が原則です。
ちなみにオペレーティング・リースはファイナンス・リース以外のリース取引という定義になっています。
実際問題ほとんどのリース取引はファイナンス・リースに当てはまるのではないでしょうか?
結局の所、上場大手企業が採用しているIFRSという国際会計基準の指針において、
このファイナンス・リースとオペレーティング・リースという区分は2019年1月から廃止されました。
IFRS16号に則り、原則として全てのリースがオンバランス処理として処理されます。
オンバランスとは貸借対照表(バランスシート)に計上される、つまり資産と負債に計上される処理となります。
リース物件所有権の移転の有無は関係なく売買取引と同じ処理
リース物件の所有権が借手に移転する(所有権移転ファイナンス・リース)と、
それ以外、つまり貸し手が所有権を持つ(所有権移転外ファイナンス・リース)の違いはどこにあるでしょうか。
2007年3月に公表された企業会計基準ではこれまで認められてきた、
所有権移転外ファイナンス・リースを賃貸借取引(オフバランス取引)とする会計処理は廃止され、
通常の売買取引と同じ処理を取るように改定されました。
ただし、少額リース資産及び短期のリース取引つまりレンタルに関しては、
オペレーティング・リースに準じて通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理が認められます。
結局の所、普通に売買取引をして手に入れた物件についても、
ファイナンス・リースによって手に入れた物件についても、どちらも資産として計上します。
ということは、減価償却が必要となってきます。
リース料の処理については利息相当額をどのように配分するか、
維持管理費用相当額をどのように処理するかという細かい論点はあるものの、
原則としては通常の売買取引と同様の会計処理ということになります。
少額リースと短期リースについてはIFRS16号においても賃貸借取引と同様の処理になります。
中小企業のリース会計処理もほとんど同様だが少し緩い
中小会計指針におけるリースの会計処理はどうなっているでしょうか?
所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る借手は、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う。
ただし、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる。
原則としてはこれまで説明したとおり通常の売買取引と同様の会計処理となりますね。
しかし、但し書きとして「賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる」とあるように、
絶対に資産計上されるべき取引であるとまでは規定されてはいません。
公益社団法人リース事業協会のWebページを読んでみましょう。
中小会計要領が策定されたことに伴い、リースの賃貸借処理は、
中小企業にとって「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」として位置付けられることになります。
なお、金額的に重要性がある場合、借手は、未経過リース料を注記します。
これは、中小会計指針において賃貸借処理を選択した場合も同様です。
なんとも歯がゆい記載になっていますね。
所有権移転外リースに関しては、原則としてはオンバランス処理だけれども、
もし賃貸借処理をしている場合は未経過リース料として記載しておいてねというニュアンスでしょうか。
現実的には法人税法上のリース取引の基準に従って処理するのが良いでしょう。
No.5702 リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分)
法人税法上のリース取引とは、資産の賃貸借(次の2に掲げるものを除きます。)のうち、次の要件の全てを満たすものをいいます。
(1) リース期間中の中途解約が禁止されているものであること又は賃借人が中途解約する場合には
未経過期間に対応するリース料の額の合計額のおおむね全部(原則として90%以上)を支払うこととされているものなどであること。
(2) 賃借人がリース資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができ、
かつ、リース資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること。
なお、リース期間(契約の解除をすることができないものとされている期間に限ります。)において
賃借人が支払うリース料の額の合計額がその資産の取得のために通常要する価額のおおむね90%相当額を超える場合には、
リース資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであることに該当します。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5702.htm
グローバル・スタンダード的にはリース資産はオンバランスが適当
これまで日本の会計基準は独自なところがありましたが、
近年はIFRS(国際会計基準)に則り、ほぼグローバル・スタンダードの会計基準となりました。
これまでの日本の会計基準において、重要なオペレーティング・リース資産が、
リースであることから賃貸借処理に準じた会計処理を許してきたのですが、
国際的にはリースという名目でも実質的に売買取引と同じような利益を享受しているのですから、
資産として計上されるべきであろうとみなされていました。
これはつまり貸借対照表において重要な負債がオフバランスとなっているということでもあり、
資本市場及び我企業の財務報告に対する信頼性に関するリスクが大きいと考えられたのです。
ただし、長期のリースとなる土地や不動産に関するリース取引については、
リース料の見積もりがその時間的不確実性から困難であるという指摘もあり、
日本のリース会計基準の改定にはまだ決着がついていないのが現状です。
第 425 回企業会計基準委員会 リース会計基準改正に関する基本的な方針
https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/20200212_19.pdf