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コロナの影響で東京から30代以上の人が千葉に脱出している?

今日は政府統計データの分析視点についてご紹介します。
トピックとしては「コロナによって都道府県の人口移動はどのように変化したか?」を考えます。

 

利用する統計データと分析ツール

都道府県間の人口移動が分かるのでしょうか?
実は総務省発行の住民基本台帳人口移動報告を利用することができます。

また、政府はe-Statという統計処理サービスを提供しており、
今回の住民基本台帳人口移動報告についてもWeb上で簡単かつ詳細な分析が可能です。

社会科学研究の論文が何本も書けそうな素晴らしいツールです。
ぜひ利用してみて下さい。

 

政府統計の総合窓口
https://www.e-stat.go.jp/

 

人が集まるところにビジネスがある時代は終わる?

なぜ、人が集まるところにビジネスができるのでしょうか。
それは、根本的には衣食住という生存に必要な要素を提供することで対価を得られるからです。

現代では衣食住はもちろん娯楽や趣味のためのサービスに対価を支払う人もたくさんいます。
パチンコやディズニーランドはまさに都市生活者のための娯楽施設です。

こうした人が集まるところには様々なビジネスが生まれます。
人が集まる会社に対してサービスを提供するビジネスも生まれます。
ITサービスの殆どは法人向けにシステムやソフトを提供することで成り立ちます。

日本では東京を中心とした首都圏が日本全体のGDPの33%を生み出しており、
その人口から生まれるマーケットを取り込むべく、あらゆる企業が集積しています。

各国の主要都市への集中の現状-国土交通省
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001319312.pdf

つまり、人がいるところにビジネスも集まる性質があります。

しかし、2019年2月から世界的に流行した新型コロナウイルス感染症対策として、
大手企業からテレワークがほぼ強制的に実施されるようになると、
在宅勤務がむしろ義務化されるなど大きな働き方の転換点を迎えています。

とはいっても、このテレワークは誰もができるわけではありません。
士業など専門サービス業、情報通信業などはテレワークがやりやすい反面、
製造業や建築業、医療介護業、飲食業は、人やモノとの関わりの中で価値を生み出す仕事であり、
全員がテレワークのみで事業を成り立たせることは難しいのです。

ただ今回コロナの影響で東京から人が流出しているという噂を聞いて検証してみました。

 

テレワーク推進によって東京から人が離れていった?

 

コロナは人口の地域間移動にどのような影響を及ぼしているか
https://www.jcer.or.jp/j-column/column-saito/2020121.html

 

今回注目したこのリサーチではコロナ下においてこの人の移動が、
どのように変化したかに着目しています。

結論として2020年10月の都道府県別転入超過数のデータから、
東京からの転出が顕著になっていることがわかりました。(転出超過)

実際に総務省の住民基本台帳人口移動報告を見てみましょう。
少しグラフが見ずらいのですが、このグラフは東京を中心として、
関東と中部地方の一部の県の人口移動をグラフ化したものになります。

 

中央の東京都のデータを見たときに年齢別転入超過数を分析すると面白いことが分かります。
転入超過になっている年齢層は15歳から29歳までの3階級となっています。

一方でそれ以外の年齢層については転出超過つまり東京都外に転居しているのです。
特に30歳から34歳の階級については東京都外に転居する傾向が明らかにあります。

これだけでも「へぇーそうなんだ!」という発見に溢れていますが、
このデータを更に面白くするためには比較してみるという視点が良いでしょう。

例えばちょうどコロナが流行する直前だった2019年10月(前年同月比)のデータを見ると、
東京都は明らかに転入超過でした。

1年で東京都に引っ越してくる人が多かったという傾向が、
反対に東京都外に引っ越していく人のほうが多くなってしまいました。

30代以降の子育て世代は4歳未満の子供とともに移動する事が多いでしょうから、
やはり、4歳未満は東京都から転出超過という傾向が見られます。

逆に転入超過になっている東京周辺の都道府県を探してみると、
千葉県が明らかに転入超過になっています。

2019年10月は転出超過だった千葉県が2020年10月には転入超過に変わっています。
千葉はベッドタウンとして開発が進められているということもありますが、
都内に済んでいたファミリー層がコロナをきっかけに千葉に移住したとも考えられます。

これらはまだ仮設の段階に過ぎませんが、テレワーク等働き方の変化により30代以降の、
基幹業務を担う家族持ちの年齢層が在宅勤務の推進により通勤の必要性が低下し、
生活のしやすさ等を求めて近郊の都道府県に転出したと考えられます。

もう一つ面白いのは、栃木県や山梨県などの2019年10月時点での人口流出県から、
流出がある程度ストップしているという事実です。
都道府県間をまたぐ移動が自粛されたことで人口移動自体が縮小していることも分かります。

 

社会科学データサイエンティストの視点

今回はこのように一つの統計データをイベントの前後で比較することで、
そのイベントが及ぼしたであろう結果を推察することができます。

ぜひ皆さんも、色々な統計データを分析して自分なりの結論を導き出してみて下さい。
なお、エコノミストやアナリストの仕事はこのように客観的なデータを元に、
社会事象の将来を予想することにあると考えています。

データサイエンスに興味がある方もツールを手に入れる前に仮設思考を意識してみると、
より経営に資するデータ分析の視点が理解できるようになります。

間違っても簡単な推論の枠組みを複雑化しないことです。
詳細なデータ分析で高度な処理が必要となる場合にのみ、
PythonやSASなどの分析ツールを駆使してデータから結論を導き出しましょう。

Keep it Simple, Stupid!

 

阿部寛さんから学ぶKISS(Keep it simple, stupid)の原則
https://qiita.com/DeployCat/items/09bb6831b029f5185b33