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ジョブ型雇用は日本企業に馴染まないけれど武器を磨いた人が報われる時代がくる

今日は雇用について考えてみたいと思います。

まず、ジョブ型雇用とは何でしょうか?
実力主義とはどういった考え方でしょうか?

雇用というのは使用者がその労働に対して報酬が与えられることです。
日本では長らく「メンバーシップ型」と呼ばれる終身雇用などの制度がありました。

このメンバーシップ型雇用の良いところは一致団結して安定的に会社を発展させるため、
特にすり合わせ型の製造業などで大きな原動力となったところです。

経済成長が右肩上がりの時代ではこうしたメンバーシップ型雇用を通して、
生産性なども気にせず、売上を伸ばすことができました。
一方で、労働者も会社に入っていれば安泰でしたので当然、
大きな木に隠れて働かない人も現れたのですが、経済成長していたので全員でそういう人も養えました。

しかし、冷戦の集結、日本ではバブル崩壊、モノ中心の産業発展に陰りが出ると、
これまで大きなアセット(資産)を保有していた大企業は、
リストラクチャリングせざるを得なくなりました。

リストラクチャリングはいわゆる「リストラ」ですが、これは首を切るということではなく、
Re-Structuringですから本来は「事業の再構造」という言葉です。
うまく行かないことをやり直すことは当たり前ではあるのですが、
日本では解雇等が注目されすぎてしまい悪い事というイメージができてしまいました。

また、解雇は労働基準法で厳しく制限されてきました。
労働者は立場が弱いという前提で法律が作られており、その根本はやはり終身雇用にありました。
つまり、労働者が会社に奉公する代わりに対価と安定を得るという思想があったのです。

 

これからは武器があればチャンスが増える時代

 

実は会社の寿命は30年ほどと言われているのですが、
投資の世界では株式会社はゴーイングコンサーンが前提になっています。
これは将来永劫活動を続けるという意味で、永久に成長することを期待されています。

しかし、どう考えても不可能ですよね(笑)

私達がいつまでも同じスマホを使ったり、ゲームやアプリを使わないように、
いつかは飽きられてしまうので結局利用者が減り、売上が減少し、
事業の転換を図らなくてはならないときがやってきます。

日本には文化として変わらないことを良いこと、アタリマエのことだと考えるところがあります。
同じ仕事を真面目にしていればそれだけで良しとされてきたのです。
しかし、一方で大企業における新卒採用等、一度学歴で判断されて入社してしまえば、
仕事が関係なしに高い所得を手に入れることのできたのも事実です。

経済成長は企業者によってもたらされると説いた経済学者シュンペーターの指摘の通り、
結果の平等ではなく機会の平等として再就職やスキル支援を通して、
自分の力を活かしたり新しい分野でやりがいを感じられたほうが、
全体として個人レベルでの意欲を生み出し、経済成長につながると考えています。

特に現在は時代の変化は加速しており、右肩上がりの産業と思われていたものでも、
流行り廃りがあるように数年で右肩下がりに転落することがあります。
そんな中で「ジョブ型」雇用を日本でも取り入れようという動きがあります。

 

ジョブ型雇用は我々にとって下剋上ができる制度

 

大企業が取り入れているジョブ型雇用は、端的に仕事に応じて報酬額を変える制度です。
実力主義というのもおそらく同様のことを指していることが多いです。

これまで会社内で価値が高いとされてきたポジションにおいては高い報酬を、
名ばかり管理職のように重要度が低いポジションには相応の報酬をという動きです。

ただ、実際問題としてそれを受け入れられるかと言うのはまた別の問題です。

ある日「あなたはこのままでは昇給しません」

毎日働いていた会社から突然言われたらショックですよね。
しかし、ジョブ型雇用ではそういったことも受け止める機会が増えていきます。

それを前提に心の準備をしていないと、つまり自分の武器を磨かないといけません。
ただ、現実としてまだ日本人のマインドは変わっていません。
おそらくそれなりの覚悟ができる日がくるには数十年はかかると思います。

経済成長が続いているうちはあまり付加価値のない仕事をしていても、
ある程度のレベルまで、個人のプライドを保つためにも昇進させてくれました。

しかし、ジョブ型雇用になると関わっている仕事によって報酬は大きくかわりますし、
管理職としてのポジションが用意されていない場合だってあり得ます。
実績を見せることができなければメリットを掴むことは難しくなります。

こうした変化を怖いと思う人もいるかもしれませんが、
多くの人にとってはチャンスになると信じています。
簡単とは言いませんがその人のやる気と経験と成果でポジションが手に入る可能性が増えるからです。

 

ジョブ型雇用だから人事評価がよくなるというわけではない

 

一方でジョブ型だから客観的な人事評価されるかというとそうではありません。
つまり、個人がジョブ型雇用によって妥当な評価を得られ、
報酬も市場均衡に一致するかはこの制度だけでは保障されていません。

例えば、米国は実力主義のジョブ型雇用を前提としていますが、
実際に実力をどう測るのかというのはどれだけジョブ・ディスクリプションを明確にしても難しい。

人と人の関係である以上、仕事が円滑に回らなければ評価されずやめさせられてしまいます。
特に幹部のポジションには経営幹部とのコネクションが重要になりますし、
採用時に能力を示すシグナリングとして学歴はやはり有効に作用しがちです。

日本とあまり変わらないと感じる方も多いのではないでしょうか?
会社で人間関係が大きなファクターになるのは採用の形を変えようが同じなのです。

人間なので足を引っ張ったり、口利きをしたりするのはどんな制度でも同じだからです。
問題はその会社では自分の仕事ができないと感じた時に、
他の会社でも同じようにジョブ型で採用をしてくれるかということです。

結局は市場全体では人材の流動性が高いからこそジョブ型雇用が成り立つのです。
これは以前取り上げた「ポータビリティ」が高い方が移動がしやすいからです。

エンジニアは自分で切り開く喜びを感じられる仕事
https://cocolofun.co.jp/2020/07/09/engineer/

汎用的で高度なスキルを持っている人は報酬が自動的に高くなり、
他の会社ではあまり使えないスキルしかない人は報酬が自動的に下がります。
これは誰が決めるということではなく、欲しい人が多いか少ないかという市場の原理です。

こうした背景にある報酬の決まり方の仕組みも一人ひとりで意識しなければ、
本当にジョブ型雇用が進むということにはならないのではないかと感じてしまいます。

会社は分業をするために存在します。その方が効率よく仕事ができるからです。
そして、経営者が経済的なリスクを背負うことによって取引信用が生まれます。
経営者に対して信用創造で貨幣を生み出します。

経済成長が大切なのはそれに伴う消費と投資の増大がさらなる新産業への投資、
分業へと連鎖的につながっていくからです。

日本にはまだまだ改善の余地があるとは感じませんでしょうか。
雇用のあり方を含めてこうした変化自体は既得権益を取り崩すチャンスになるとも言えます。

一個人としては既存の雇用制度がすぐに崩壊することを期待するよりも、
個々人の武器を磨きながら、
ジョブ型雇用を実施する会社に飛び込むチャンスを狙っていく必要があります。

 

個々人が変化することを応援できる会社でいたい

 

個人的には「実力主義」というと少し恐れを抱いてしまいます。
自分が本当に実力があるのかどうか不安になるからです。私もずっとそうでした。

同じような悩みのある20代、30代の人も多いと思いますが、
毎月30万円くらい振り込まれるくらいの仕事ができていれば、
社会の中で十分に立派で、価値があると評価されている人間です。

逆にそれ以下でも悩むことはありません。
お金が少なくても行きていくことができないわけではないですし、
幸せではないということでもないからです。

そして、現実としてスキルや経験に応じて天井はほとんど無いからです。

上を見たらキリがありませんし、もっと上を目指して欲しいとも思いますが、
エンジニアの世界であればステップアップしていくことができます。
そのあたりの生き抜き方についてはこちらも参考にしてみてください。

報酬というわかりやすい指標を伸ばすのであれば、
一番大切なことはやはり評価されやすい技術や経験を積まなければなりません。
そのためには自分の売り込み、セールスポイントを伝える必要があります。

どんなに実力があっても他の人が評価できないとなかなか評価されません。
何かを作る場合にもユーザーにその価値を認めてもらわなければ誰も使わないのです。

自分で相手が価値を感じる要素を整理して言語化する。
これがものすごく重要である。そんなアタリマエのことを学ぶのに自分は8年かかりました。

みんなには同じような失敗をしてほしくないですし、それぞれの幸せを掴んでほしいです。
だからこそ、常に毎日変化していく必要があると思うのです。

誰しもそのままで生きられるのならそのままが良いと思います。
しかし、資本主義ではどうしても市場が変化していきます。
それは消費者の考え方や欲しい物が移り変わるからです。
すると、これまでやっていたままの形では事業は続けられなくなります。

だからこそスクラップ・アンド・ビルドで新しい産業を探し求めていくことが、
暗黙のうちに求められています。それは自分自身についても全く同じです。

そんな無常な世の中において、今関わってくれている人には本当に感謝しています。

だから働いてほしいというのではなく、できるだけ武器を磨く時間にしてほしい。
特にITエンジニアの仕事は人と密接に関わる仕事です。

そして何よりかなり市場原理が働く、いわばその人の腕が物を言う世界です。
だから市場に評価される技術・スキルがあれば、
小さな会社でも個人でも割合良い仕事を得られるので相応の報酬も得られます。

一発逆転を狙うのはギャンブルですが、コツコツ市場評価を意識して仕事をすれば、
数年でジャンプアップすることくらいはできるのが良いところです。

自分も勘違いしていましたが、会社は単に人を働かせて利益を得る悪の存在ではなくて、
労働の対価を精算する機能、営業する機能、給与と収入のタイムラグの金銭的なリスクを背負ったり、
設備を整えたり、新しい人に来てもらったり、人事労務経理など雑多な仕事をしたり、
実際やるとなると多くの人が面倒くさいと感じる仕事を一手に担う存在です。

こういう仕事を職業にしている人がいるくらいですから、(税理士、社労士など)
自分ですべてやらないことが大切です。むしろお金を払ってやってもらうくらいが良いです。

そう考えるとやっぱり個人事業主というのはしんどいところがあります。
自分が何でもやるか、お金を払って誰かにやって貰う必要があるからです。

「いや、それはきついよ…」

という人には、とりあえず数年間、働きながら武器を磨き、考える時間が必要です。
どういうキャリアに興味があるか、何がやっていて自分に合っていると感じたか。
市場動向としてどういう人材が求められているか。このあたりは真剣に相談してください。

会社から無理矢理に何かを学んでもらうことはしたくありません。
それぞれ一人ひとりが生きる目的を見つけながら自由に学ぶべきだと信じているからです。

そのために会社ができることはあまりありませんが、
興味あることは何でもやってほしいです。

資格取得支援制度や書籍購入制度はガンガン使って武器にしてほしいですし、
AWSなどの最新のクラウド開発環境も自由に使えるように提供しています。

これらも私が考えている「良いなと思う制度」しかやっていないので、
「こういう制度、支援がほしい」ということがあれば言ってもらえれば真剣に検討します。
基本的には本人がやりたいという意思があれば可能な限り柔軟に対応する。
これが弊社のエンジニアリング人材育成の一番コアとなるポリシーです。

自社開発サービス等高い付加価値を提供する事業はまだまだ発展途上です。
その点は、経営者として一刻も早く実現させなければと焦る気持ちが無いわけではありません。

新しいサービスの立ち上げは困難がてんこ盛りです。何もしないほうが安定しています。
しかし、挑まなければ永遠に作業をこなすだけの存在になってしまいます。

何より人が喜ぶサービスを考え、形にできる人材は引く手あまたです。
それはどんな言語でコーディングできることより最強の武器になります。

そういう人材を生み出して、社内からあたらしいサービスを世界に提供していく文化にしたいですし、
弊社から飛び立って別のフィールドで大活躍する人材に育ってほしいと願っています。