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【祝マイホーム】年末調整から見る住宅ローン減税の仕組み

最近、テクノロジーや思想の話をあまりしないで、
ものすごく実務的な労務関係の記事を書いているのは年末調整と決算にてんやわんやだからです(笑)

かつて勤務していた会社が会計事務所だったこともあり、
「Arms Length Price」とか「Cost Plus」とか「Valuation」とか言っておりましたが、
その頃を偲ぶことも兼ねて、最近学んだ知識ををまとめております。

サラリーマンの夢であるマイホーム購入を強く応援する制度

「あ、○○さんも念願のマイホームですね!」

出産やマイホーム購入など社員の一大イベントはとっても喜ばしいことです。

ココロファンにも当然家族を持ち、頑張るお父さんお母さんが在籍していますので、
住宅ローンの話とか、子供の話というのは結構あるんです。

一方で、サラリーマンにはあまり縁のない確定申告など、
税金の手続きが増えるのがとっても大変だという声もあります。

日本には「住宅ローン控除」というマイホーム購入を促進する減税制度がありますので、
たくさんの方が一度は確定申告をしたことがあるのではないでしょうか。

今回は社員の年末調整などで身近だけど、
意外と知らない「住宅ローン減税」についてご紹介します。

意外と簡単!住宅ローン控除の仕組み

住宅ローン控除はとても簡単です。
ローンというのは住宅を購入するための借入金のことを指しています。

住宅を購入するには最低数千万円の資金が必要ですが、まとまった資金を持っている人はごく一部です。
そのため、サラリーマンでも住宅を購入できるよう、
不動産会社や金融機関がローンを準備したことに始まるんですね。

しかし、民間金融機関ではやはり属性の良い人にしかお金を貸しません。
そのため持家取得推進を図るという名目で、
1950年代に日本政府の特殊法人住宅金融公庫が設立され、公庫融資制度が普及したのです。

とはいっても住宅ローンの返済はサラリーマンにとっては重いですよね。
そのため、住宅ローンを背負っている人はその返済負担を減らすために、
住宅ローン控除制度が始まったんです。

実はこの「住宅ローン控除」は長い歴史があるんですが、
今回はその歴史については置いておくとして、控除限度額や控除期間がどんどん拡大しています。

マイホームが欲しいという人にとっては必ず使う制度ではあるのですが、
この制度、かなり大きな節税メリットがあるのでついついローンを気軽に組んでしまう人も多そうです。

住宅ローン控除の仕組みはとっても簡単

この住宅ローン控除の仕組みはいたって簡単です。
「借入金年末残高に1%をかけた金額が、その年の所得税から控除」される仕組みです。

例えば2020年1月27日にマイホームを購入したとします。
この場合は、13年間にわたって住宅ローン控除を適用することができます。

とりあえず、おおざっぱに新築物件を購入したケースを考えると、
1~10年目までは「借入金年末残高等×1%(控除限度額40万円)」となります。
35年4000万円の借入をした場合だと、だいたい毎月6万円でボーナス月は35万円ほど返済があります。

つまり、年末までには6×11か月+35×2回ということで136万円返済していますので、
3864万円の年末残高となり、これの1%ですから38.64万円が住宅ローン控除対象額となります。

11~13年目は別の計算となりますが、基本的には同様の計算になります。
詳しくは国税庁のWebページをご覧ください。
No.1210 マイホームの取得等と所得税の税額控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1210.htm

 

住宅ローン控除は節税にぴったり?

「住宅ローン控除は税額控除だから節税インパクトが大きいんですよ!」
もしかすると、こうした文句を聞いたことが一度はあるかもしれません。

「所得税をできるかぎり支払わないで済むかもしれない」という点においてはそう言えます。

ここでは住宅を購入すべきか論争に踏み入ることはしませんが(皆さんの価値観次第だと思います)
住宅ローン減税の大きなメリットとされる税額控除についてご紹介します。
端的に言えば、

「所得から経費と所得控除を引いた後に税率をかけると出る所得税額から、さらに引ける控除」です。

これだけでも「?」となる人が少なくないでしょうが、
一番親しみやすいのは年末調整の還付でしょう。

多くの人は毎月源泉徴収される所得税が12月の年末調整で多くの場合返ってくると思います。
それはあなたの代わりに会社が「払うべき所得税を再計算して確定申告をしている」からです。

この住宅ローン控除は上のとおり、
所得税額からさらに控除できるという性質があります。

実は税額控除となる制度は身近には住宅ローン控除以外にはありません。

ほかに税額控除の対象となるのは、租税条約など国家の法律に優先する取り決めからくる「外国税額控除」や、
寄付など社会活動を豊かにするための活動を促進する「寄付金控除」、二重課税を防ぐ「配当控除」などがあります。

最後に計算された税額からさらに控除できるという点で、
保険や民間年金と比べても大きな額が控除できるのです。

そう考えるととても強力な控除なのですが、
国際的な取り決めでも公共的なお金の使い方でもないマイホーム購入の借金のために、
なぜそこまで優遇するのかというのはちょっと政治的な感じがありますね(笑)

とにかく、マイホームが欲しいサラリーマンにとっては大きなメリットがあります。

住宅ローン控除でよく聞く「特定取得」とは

一般的な住宅の購入では住宅メーカーやディベロッパー、
不動産販売会社から購入することになります。

この際には当然に消費税を支払いますが、
このように「消費税が課された住宅を購入することを特定取得」と称します。

「特定取得」とは、住宅の取得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等
(消費税額及び地方消費税額の合計額をいいます。以下同じです。)が、
8%又は10%の税率により課されるべき消費税額等である場合におけるその住宅の取得等をいいます。
https://www.keisan.nta.go.jp/h26yokuaru/shotokuzei/zeigakukojo/jutakukariirekin/tokuteisyutokutoha.html

中古物件の場合は一般的には「不動産仲介業者」を介した個人間売買となりますので特定取得には当たりませんが、
普通に新築住宅を購入するということを考えると多くのケースでは「特定取得」に該当することになります。

住宅借入金等特別控除申告書に記載されている「特定増改築等」とは

最近は、特定増改築と記載されている住宅ローン控除も多く見られます。

特定増改築というのは一般的な建売住宅に加えて、
バリアフリー化や省エネ化といった増改築を行った住宅を指しています。

特定増改築等住宅借入金等特別控除とは、
居住者が住宅ローン等を利用して自己が所有している居住用家屋のバリアフリー改修工事や
省エネ改修工事を含む増改築等(以下「特定の増改築等」といいます。)をし、一定の要件を満たす場合において、
その特定の増改築等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、
居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除するものです。
https://www.keisan.nta.go.jp/h26yokuaru/shotokuzei/zeigakukojo/jutakukariirekin/tokuteizokaichiku.html

省エネ化工事を行った住宅というのは「全室断熱改修工事」を行った住宅を指しています。
No.1217 借入金を利用して省エネ改修工事をした場合(特定増改築等住宅借入金等特別控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1217.htm

バリアフリーは分かるのですが省エネでさらに住宅ローン控除が有利になるというのは、
ちょっと制度を複雑化し過ぎな感じはあります・・・

節税メリットに目が眩んでしまってはダメ

税額控除という性質を持っているためその控除インパクトは大きい住宅ローン控除ですが、
よくよく考えると住宅ローンの金利は変動で0.3から0.4%、フラット35では1.2%程度です。

リスク回避的なサラリーマンの多くはフラット35を好んで利用します。
その場合、目先の税務メリットにウハウハとなってしまいがちです。

ちょっと考えると分かるのですが、借入金残高に1%をかけた金額が税額控除ということは、
借入金に金利が1%以上乗っている場合は支払う金利のほうが高くなります。

つまり、ローンの金利が1%より高くかつ13年以上のローンであるフラット35というのは、
長期的に見ると支払う金利は控除金額を上回るのです。

単純に借金の金利分以上の税額控除が受けられるなら良いのですが、
年収がそこまで高ないサラリーマンは控除限度額も低いのであまり高額なローンは考えものです。
また、20年で70%価値が下がる日本の不動産では、35年後の物件の資産価値もたかが知れています。

マイホームを資産運用だと思っているとそれは危険です。
変動費化できる賃貸のほうが良かったのではないかということにならないよう、
自分や家族の生き方と照らし合わせて考えるようにしましょう!

こちらのブログでもわかりやすい解説がありますので、
ぜひマイホーム検討の際はよくよく理解して決定してくださいね。

住宅ローン控除(減税)の図解解説と減税額早見表2020-計算方法をわかりやすくシミュレーションで解説

最後に労務担当者の人にe-LTaxのCSV申告ノウハウをご紹介

実務では年末調整をした後にe-LTaxで申告を行いますよね。
専用の税務ソフトは電子申告に対応しているので問題ないのですが、
エクセル等でやろうとすると少し面倒です。

例えば「給与支払報告書-源泉徴収票の統一CSVレイアウト仕様書 平成30年分~」を見ても、
CSVファイル自体エクセル等で開くと頭の0が消えてしまうなどかなり厄介です。

住宅ローン控除についても上記の通り色々な特別規則があるので、
どの住宅ローン控除を選択するのかを数字で登録する必要があります。

ちょっと見てみましょう。

住宅の新築・購入又は増改築の区分により、次の番号を記録する。
租税特別措置法第41条第1項又は第6項に規定する住宅借入金等を有する場合の特別控除は「01」、
同法同条第10項に規定する住宅借入金等を有する場合の特別控除は「02」、
同法第41条の3の2第1項又は第5項に規定する特定増改築に係る特別控除は「03」、
東日本大震災の被災者の家屋の再取得の場合の特別控除は「04」を記録する。

また、租税特別措置法第41条第5項又は同法第41条の3の2第18項に規定する特定取得に該当する場合で、
同法第41条第1項又は第6項に規定する住宅借入金等を有する場合の特別控除は「11」、
同法同条第10項に規定する住宅借入金等を有する場合の特別控除は「12」、
同法第41条の3の2第1項、第5項又は第8項に規定する特定増改築に係る特別控除は「13」を記録する。
なお、複数の所得税における住借控除の適用を受ける場合は、1回目の所得税における住借控除の適用について記録する。

ちょっと骨が折れるのではないでしょうか。
ちなみに特定増改築等に該当する住宅ローン控除は「03」を選択しなければなりません。

e-LTaxという無料の申告ソフトではこの数字を入力することで申請可能です。
手作業にはなってしまいますが少人数ならこのソフトでできます。

別の年末調整ソフトで出力したCSVファイルもエクセルで開くとエラーが出てしまうことがありますので、
Accessなどのデータベースソフトを利用したほうが良いでしょう。

零細企業であればe-LTaxで申告してみても良いかもしれませんが、
手入力でやるのはちょっと大変です。良い解決策が見つかったらまたご紹介します。