メニュー 閉じる

2020年は問題解決ではなく可能性ドリブンアプローチの時代

 

「問題解決、課題解決の視点が重要だ!」

 

ビジネスにおいて顧客の問題解決や課題解決によって新たなビジネスシーズが生まれます。
誰かが困っていることを解決するということは、
誰かに喜ばれるということであり、それに対価を支払う可能性は高いからです。

ここ最近、広まっている「デザイン思考」という概念も、
多くの場合、問題駆動型アプローチにおけるデザイン思考を指しています。

製品やサービスを設計する場合、なんらかの「望ましくない」状況に焦点を当て、
これらが解決されるような理想的シナリオを検討して問題を解決するのです。

この思考法は極めて有用であり、私達が利用している製品やサービスは、
ほとんどすべて問題解決によって質が向上していると言えるでしょう。
UX体験の向上のためのUI(ユーザーインターフェース)改善、
PDCAサイクルやアジャイル開発もすべて問題解決を適切に行うための枠組みです。

 

問題・課題解決だけでは新しい視点が不足する

 

一方で、使いやすいことや便利なこと、早くて快適なことがすべて、
ユーザーの幸せにつながっているのかというと必ずしもそうではありません。

例えばすべての通信会社が価格競争を行うことで消費者はメリットを受けますが、
一方で会社間での差別化は難しくなり、
規模の利益や資産を活用できる既存の大手通信会社はますます有利になります。

スマートフォンのアプリケーションがよりユーザーを惹き付ける工夫を凝らすことで、
日常生活におけるアプリ利用時間はますます増え、
友人や家族、恋人との会話は減っていきます。

インスタ映えするタピオカドリンクを販売することで、
SNSでタピオカを飲んでいる自分を演出したことへの満足はありますが、
砂糖を過剰摂取しすぎたり、飲みきれないドリンクを捨てることになります。

短期的にはユーザーが喜ぶような問題解決を行っていたはずが、
思わぬところで新しい問題を生じさせていることはよくあります。

プラスの影響とマイナスの影響を比較したときに前者のほうが大きければ、
良いという考え方もできますが、価値判断基準は時代によって変化していきますし、
人間が合理的にプラスの影響とマイナスの影響をすべて把握できることはありません。

また、解決手段としてもすべてにとって良い方法というのは中々ありませんが、
ユーザーのニーズに答えていくということは、ユーザーが課題と認識していることを、
解決していくプロセスにほかなりません。

例えば、このような課題に対してどのような解決策があるでしょうか。

 

  • 太り過ぎていること→ダイエット法
  • 日々がつまらない、娯楽不足→ゲーム
  • 保険料が高い→安い保険会社

 

こうした課題解決法はビジネスシーズを発見するときに最も取り掛かりやすいものです。
なぜなら、今、その人はその問題について課題を抱えているためです。

目前の課題を解決することができれば確かに問題を解決したと言えるのですが、
数学の問題とは異なり、現実の問題は複雑であり、
長期的な影響やその解決策が導く他の問題を発生させることもあります。

さらに、すでに消費者はモノやサービスに飽和しています。
ほとんどのアイデアは解決策としては有用でありながら、
すでに世の中に多数提供されており、これ以上は必要とされてなくなりつつあります。

そのような時代に私達は何に着目すべきなのでしょうか?

 

可能性に着目した探索から生まれるイノベーションの時代

 

ここで必要とされる視点は「可能性を発見する」という考え方です。

可能性ドリブンのアプローチ(possibility-driven approach)は、
ユーザーの生活の中で、何らかの問題を解決することだけにとらわれず、
新しい可能性のある未来について模索することを目的とするアプローチです。

「問題発見アプローチ」と似ているのですが、問題発見アプローチはあくまで、
解決するための問題を発見しようという視点で観察しているのに対して、
可能性ドリブンのアプローチは解決するための問題発見にとらわれず、
新しい可能性について対話をしながら探索していくワークショップに近い視点になります。

例えば、何らかの障害を持っている人に対してみなさんはどう思いますか?
従来型の問題解決アプローチでは障害と一つの解決すべき問題として捉えます。

「障害をテクノロジーで解決できるのではないか?」という視点などです。

先程も触れたように問題解決型アプローチの原動力はこうした問題を解決することで、
「対価」を手に入れることができることにありました。

医薬品や義手義足といったプロダクトは病気を直したり、再び歩いたり、
他の人と同じように生活できるようになる可能性を切り開くために存在します。
それを欲しがる人が多ければ多いほどビジネスチャンスは広がりますし、
企業は利益を上げることが可能になります。

しかし、障害は社会的に生じているという視点から見れば、
障害を持っているということはあるべき機能が欠落しているということではなく、
そうした個性を持って生まれた人間と世の中の大多数の人に違いがあることで生じます。

そうであるならば、マイナスをゼロもしくはプラスにするという、
問題解決という枠組みで捉えることでむしろ可能性を標準化してしまう恐れがあるのです。

私も健常者として生きている以上は精神的に落ち込むことがあっても、
社交的ではないこともそれを先天的な障害からくるものとは言いにくいです。

しかし、内向的な人が価値を発揮できる場というのは必ずあり、
そうした個性が少しずつ認められるように変化しています。

つまり、すべての人間は何らかの可能性を持っているものとして、
その人の感性や考え方からどういう生き方、どういう気持ちで暮らしたいか、
そのためにテクノロジーや思想、政治や文化はどうあったらよいかをゼロベースで見つけられたら、
より、多くの人が救われるのではないかと考えられるのです。

可能性ドリブンのアプローチによる発見と価値創造は固まった視点をほぐします。
自分が考えたこともなかった視点から社会や物事を見ることができます。

このようなアプローチは誰もが持っている、子供心のような純粋な視点から生まれます。
問題解決をしようと意気込むというより、対話(ダイアログ)によって、
意見を交換し考えられる可能性について物語を広げていくのです。

デザイン思考やアートの考え方は非常に親和性が高いかもしれません。
ビジネスサイドの方々だけではなく、エンジニアリングサイドの方々にも、
自分のプロダクト開発やプロダクトオーナー視点、そしてその先の希望ある世界を作るために、
可能性ドリブンのアプローチについて考えて頂けると嬉しいです。

ココロファンでは可能性ドリブンアプローチの先駆者として、
新たなプロダクト開発やビジネス創出につなげて行こうと意気込んでいます。
昨今の新型コロナの影響で自粛中ではございますが、勉強会やセミナー等もやっていきますので、
今後もどうぞよろしくお願い致します。