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フリーランスになる前に知っておきたい消費税の価格転嫁拒否

毎年恒例の中小企業庁「消費税の転嫁拒否等に関する調査(令和2年度)」が届きました。
この話題はプライシングに関わる商売の上では重要な問題です。

経営と密接に関わってくる問題ですが、意外と地下に潜りやすい問題です。
弊社はこのような問題を認識していませんが、実はかなり普通に行われているのが実態です。

あまり多くの人は触れたがらない問題ではありますが、
これからフリーランスを目指される方に少し知っておいてほしいと思い記事にしました。

 

消費税増税を理由にした転嫁拒否に気をつけて!

 

会社員だとあまり関係ありませんが、法人では殆どの取引に消費税がかかります。
ちなみに、個人事業者の取引では消費税がかかりますが、
普通の会社員、つまり労働の対価としての給与には消費税はかかりません。
ですから実際は身近ながらほとんどの人は気にしない話かもしれません。

ただし、万が一個人事業者として商売をするということになったり、
自分の法人を立てて商売をするということになるとすべての取引に消費税がかかります。

みなさんが買い物をすると支払うように、
消費税はすべてのサービスやモノの提供の対価に対して課税対象になります。
現在(令和2年6月9日)は10%という消費税が課せられています。

軽減税率制度が導入されているので食料品等一部のモノは8%に据え置きですが、
基本的にはすべて10%の消費税を支払う必要があります。

 

消費税が引き上げられるとたまに起こる問題が消費税の転嫁拒否です。
100円のものは消費税8%だと108円になりますが、
当然ながら10%に引き上げられると110円になります。

価格に対して消費者や買い手が非常に敏感であれば2円の差が売上に影響します。
そのため、買い手がその立場を利用して購入価格を108円に据え置くのです。

この場合は、消費税込みの価格が108円に据え置かれることで、
実際は最初は100円(税別)だったものが、
98.18円(税別)に割り引かれることになります。

このように買い手の立場が有利な時、本体価格を割り引いたものとみなして、
消費税分の転嫁を拒否することがしばしば行われます。

実際に公正取引委員会の消費税転嫁対策特別措置法勧告一覧を見てみると、
大手企業や公共団体を中心に複数の企業が勧告を受けていることがわかります。

 

消費税転嫁対策特別措置法勧告一覧
https://www.jftc.go.jp/tenkataisaku/kankokuichiran.html

 

小売店の場合、納入業者や店舗の賃借人に対して行われているようです。
また、個人事業者に対しても業務委託料を据え置くことがあります。

強い販売網やブランドを持つ事業者に対して、販売先を依存する場合に起こりやすく、
個人事業者、いわゆるフリーランスは特に据え置き対象になりやすいのです。

 

なぜ消費税転嫁拒否が起こるの?

 

結論から言えば「通常の商取引との区別が難しく、勧告を受けても立場が強いほうが有利なため」です。
通常の経済活動では、それぞれが自由に契約して自由に価格を決めることができます。

高いと思えば購入しませんし、安いと思えば購入することになりますよね。
それ自体は経済活動上自然なことであり、そこを法律で規制することはできません。

しかし、あまりに安く買い叩かれてしまって倒産してしまったり、
生活ができなくなるようであれば道理的に問題があります。

そこで、法律で公正な取引が行われているか監視する組織「公正取引委員会」があります。
今回の消費税増税分の価格転嫁拒否に対しても、取締を行っています。

 

よく見る、「内税」「外税」というのは消費税を表示価格に織り込むか、
それとも税抜価格と税込価格を織り込むかという表示方法の違いになります。

内税のほうが消費税分を見えなくさせるので正しいモノの値段はわかりにくくなります。
スーパーなどでは総額表示が義務付けられています。

しかし、よくわからないからと言って、
消費税引き上げの際に「内税」だから消費税が含まれているという理屈は違法です。
値引きには合理的な理由がなければならないためです。

 

それでも、価格は変動するものですし、
外から見てそれが交渉の結果なのか、転嫁拒否なのか見分けることはできないですよね。

ですから、買い手が力を持っている場合は様々な理由をつけて割り引かれることがあります。
売り手も他に売り先がない場合は仕方なくそのとおりにするしかないのです。
また、このような政府の調査に協力したことで取引先と関係が悪くなることも予想されます。

もちろんこうした「報復行為」も違反行為として勧告対象になりますが、
その証拠を提示することは難しいことや、裁判費用、将来的な取引先との関係等とのバランスもあり、
実は知らずしらずのうちにそうなっている可能性があるというのが実態かもしれません。

 

フリーランスは一人経営者として奮闘する生き方

 

フリーランス(個人事業者)の場合は自分が消費税の納税者になるので、
請求時には必ず消費税分を請求しなくてはなりません。

取引先があからさまに消費税を支払わないということはめったに無いと思いますが、
価格改定等の交渉で消費税増税分を削られてしまう可能性は無いとは言えません。

こんな小さなところで、交渉が必要になったら嫌ですよね…

でも、取引先によってはそういうことが起こる可能性もあるということです。
ものすごく、難しいところなのですが取引先との関係が強く、代替できないような人材であれば、
そういうことに巻き込まれることも無いとは思いますが、
やはりそのような可能性もあるということを考えると、不安は残ります。

フリーランスとして活躍した生活をするには、自分贔屓な人との関係が必要です。
強みがなければ結局不安定な立場で、これまでと同じ仕事をするだけだからです。

技術力とか営業力といったビジネスに必要なスキルは絶対に必要ですが、
一人で仕事をするのは結構寂しかったり、あまり学びがなかったり、
人とコミュニケーションできなかったりすることもあります。
忍耐力や好きなことを徹底して楽しめる心といった内面の力、自律が必要だと感じました。

私も会社員のメリットは一度フリーになってからしか分かりませんでした。
信用、分業、社会保険そして人から認められるスキルの大切さです。
なかでも信用の大事さを感じました。

 

会社は架空の人格を持った組織です。目に見えるものはありませんが、
出資されたお金を基礎に、様々な人が分業して利益を上げて、
全体として法人という一つの会社を運営しているので個人より信用があります。

フリーランスだと頼りにしていた案件が無くなってしまったり、単価についても自分で交渉したり、
消費税転嫁拒否のように不利な条件を飲まざるを得なくなったり、
なにかに困ったときに助けてくれる同僚はいませんし、
専門家にお願いするには非常に高額な費用を負担しなければなりません。

目には見えないコストが多いので気にならない人も居るとは思いますが、
好きなように生きているように見えてものすごく不自由なフリーランスは、
意外と少なくないのではないでしょうか。
超有名なエンジニアさんも殆どはどこかしらの企業で活躍している姿を見ると、
自分にあった環境を見つけるために色々と探してみるのも良いかもしれません。

 

これまでちょっとフリーランスに否定的なことを言ってきましたが、
一方で自信がなくてもとりあえずそういう生活をしてみるのもありだと思います。

結局はどこにいてもその評価メカニズムは完全ではないものの、
特にエンジニアの場合はある程度市場と連動して客観的な評価を得ることができます。
事務や総務は特に若手では専門職になりきれないところがあるので市場での評価が難しいのです。

今の仕事がなんとなくでも向いていると思えるのであれば、
その中で試行錯誤してキャリアアップを目指しながら使い倒すのも悪くないかなと思います。

(あくまで個人的な意見です。
究極的にはそれぞれの思い描く人生を選択したほうが後悔ないでしょう!)