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事務という仕事はゼロにはならないが高度に専門化する

よく求人では「事務職」という募集を見かけます。
ハローワークなどでも事務職については常に有効求人倍率が1を下回る人気の職種です。

東京ハローワーク令和2年4月有効求人倍率

 

事務というのは会社でバックオフィス業務に従事する仕事のことです。
会計事務員はいわゆる財務、経理の仕事と言えますが一般事務員というのは、
その他の法務、労務、営業支援などの仕事に従事する仕事になります。

一方で財務や法務、経理や労務も専門性を特化させるともはや一般事務員とは言えなくなります。
専門職として活動したり、社内弁護士や社内税理士として活動します。

近年はペーパーレスや業務効率化により、雑多な仕事というのはますます減っています。
人間がやらなくても良い、非効率と考えられる仕事は今後ますます無くなるでしょう。

今回は「漠然とした事務という仕事も今のままでは居られないよ」というお話です。

 

事務という仕事はなくなるが現場経験が必要な理由

まだまだ、こうした事務職が人気なのは不思議なことです。

実際に働きだしても本社勤務の仕事のほうが花形だと思われるフシがあります。
事務という職業は楽そうですから人気が集まるという話もよく聞きます。

実際に多くの会社では本社スタッフほど意味のない仕事をしています。

例えば経理や経営管理業務は実は極めて非効率なエクセルワークで成り立っています。
未だに多くの書類手続きが必要な社会保険手続きほど労働集約的な仕事はありません。

そのことに気づいているからこそ人が集まるのかもしれません。

確かにバックオフィス業務、コーポレート業務は経営において必要な仕事ですが、
それは営業やエンジニア、工場の労働者と同程度に必要な職種なだけです。
企業活動の根本はそこからは決して生まれません。

これまではIT環境の不備や、業績が比較的好調だったことから、
こうした間接費とされる仕事についても雇用を保つことができていました。
しかし、RPAを始めとしたIT環境が比較的容易に導入され始め、
政府の進めるeGovなどの整備が進んでくると無駄な活動はほとんど効率化されてきています。

すると、価値が出しづらい事務の仕事はますます減らされる対象になります。
これまではある意味で本社の人は良い環境を享受できていたわけです。

しかし、もともと現場にこそ価値の源泉があることに気づいていた会社はあります。
当たり前ですが利益(給与)のもとになる仕事の全ては営業と現場から生まれているからです。

例えば、トヨタ自動車のリーン生産方式や改善活動は現場の作業員が日々行う習慣であり、
そこから結果的に大きな収益を生み出し、現在のトヨタの成功があります。

工場で作業をしていて「パイプにネジを取り付ける」仕事をするのに、
「こうしたほうが早くできそうだ」「間違いが少なくなりそうだ」と気づけるのは現場だけです。
大学で生産管理を学んできた人が、教科書通り工場を設計しても気づけなかったことが、
実際に毎日働いている工員によって気づくことができ、大きな収益改善に繋がります。

弊社ではこれをバックオフィス業務でも行う文化を醸成させていきます。
限りなくバックオフィス業務を効率化するために一人ひとりが気づけたら、
ほとんどの仕事は無くなってしまうのではないでしょうか。

 

ビジネスの根本は営業と生産であり事務ではない

生産と同様に売る人が居なければ企業は存続できません。
加えて個人の成果、チームの成果が計りやすいので客観的な業績評価もしやすい、
個人の成績によって直接的に給与や賞与等に反映されやすい仕事です。

面白いことにハーバード大学ビジネススクール(HBS)は世界トップレベルの経営大学院ですが、
意外なことに企業活動で重要な「営業」という授業はありません。

「営業という仕事において大学で学ぶようなものは無い」ということのように思えますが、
正確に言うと「営業とは人生そのものであり大学で教えられることではない」ということなのです。

つまり、テクニックとしての営業を学ぶことは出来ますが、
それを持って営業がうまくいくということでなく、営業活動とは複雑なものであり、
営業というものを学生に教えられるほど経営学で体型だったモノはないということです。

ですから個人的にはビジネスに於いて重要かつクリエイティブな仕事というのは、
実は営業活動なのではないかと思うのです。

営業が顧客を良く観察し、まだ満たされていない「不」を発見する。
そして、その発見を解決するプロダクトをエンジニアと共に作ることが出来たら、
どんなに理想的なビジネスになるだろうかと思いますし、そこを目指しています。

 

事務が生き残るなら経営視点×(専門性+IT)の時代

これまでは会計や税務などはある程度の専門知識と経験が必要とされていました。

しかし、今では外部の専門家やフリーランスを活用して、
必要な時に必要なだけ相談に乗ってもらったり、業務を遂行してもらうことができます。

申告期限があったり、調査対応によって時間が拘束されたり、
上場企業であれば株主やその他のステークホルダーとの対話が必要だったり、
社会保険手続きも一定期間内に行われなければ法律に反したり、従業員の権利を損ねます。

こうした手続き自体がどうしても紙ベースで行われており、
こちらの都合では出来ないところがありましたが、今は電子申請等ができるようになりました。
大企業はむしろ電子申請でないと申告書を受け取ってもらえなくなりました。

つまり、バックオフィス業務の電子化は不可逆的に進んでいきます。
わざわざ出向く必要がないので一つの手続きにかかる時間は限りなく減っていきます。
すると中小企業であれば特に何でもできるような人材が貴重になります。

大企業ではこうしたバックオフィス業務のアウトソース化が既に進んでいます。
できる仕事の幅が小さい人はその分働く時間が減ってしまうので、
正社員ではなくアルバイトや業務委託契約で仕事を請け負うことにもなるでしょう。

このような時代に事務として生き残るには専門性とITを使いこなす能力、
そしていちばん重要なのは経営視点から日々の業務を見直すカイゼン能力です。

もし、事務職を目指しているのであれば必ず企業の未来について考えてみてください。
仕事について考えたときに、本当に自分に必要な時間の使い方なのか、
そして将来決して無理すること無く生き抜けるだけの力を育めるのか。
そういう視点を持って仕事をしている会社であり、上司がいるのか。

今、転職を考えているなら必ず自分に問いかけてから意思決定することをおすすめします。
本当に必要がない仕事は必ず無くなります。逃げ切ることはほぼできません。

目の前の心地よさに浸ってしまう前に事務職という仕事について、
「どういう事務職のプロを目指しているのか」自分自身の生き方を考えてみてください。